いますか」
 そうきくと、道子は、
「あのウ、今ちょっと……」
 留守ですと、なぜか半泣きの顔になった。
「あ、病院ですか」
 伊部が阪大の外科に勤めていたことを想い出した。
「はア、でも……」
 曖昧に言って、ふと笑うと、えくぼがあった。
「そうですか」
 と、小沢はがっかりして、
「――じゃ、また出直しましょう」
「あら……」
「えッ……?」
「あのウ……」
 帰らないで、上ってはどうかと、言いだし兼ねて、道子はもじもじしていた。
「だって……」
 お客さんでしょうと、ちらと男の靴を見た。
 道子も見て、
「あら、いいんですの」
 しかし、ぱっと花火を揚げて、
「――どうぞ」
「そうですか、じゃ」
 茶の間へ通されると、小沢は早速きり出した。
「――実は今日お伺いしたのは、著物をお借りしようと思って……」
「著物……?」
「ええ、女の著物なんです」
 小沢は頭こそかかなかったが、頭をかきながら――と言った気持で言った。
「女の……?」
 道子はふっと眉をくもらせた。
「伊部になら、詳しく事情を話せるんですが……、でも、……」
「あたしじゃ話せませんの……?」
 と、道子の声は何か鋭
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