食堂の隅で古いラッパつきの蓄音機が鳴り出した。
まるで、唖でつんぼの娘が出て行くのを待っていた――といわんばかしに鳴り出したその音を聴いていると、何かしら奇妙な感じが、小沢の頭の中をぐるぐると廻った。
ラッパつきの蓄音機がチグハグなのか。時代おくれの刺青を見たことがチグハグなのか。それとも、ネオンサインが大阪の盛り場の夜空を赤・青・紫に染めていた頃の、昔の甘い浅薄な流行歌を、焼跡のバラック建の食堂の中で、白昼きいていることが、奇妙なのか。
いや、それよりも今ここを出て行った男の行動が、何か奇妙なような気がしてならなかった。
あの娘を何のためにどこへ連れて行くんだろう。飯ならここで食えるのに、物好きな……。
いや、単なる物好きだけだろうか。
へんだぞと、小沢は呟いた。
小沢は食堂の女を呼んで、きいた。
「今の人、いつも来るの……?」
「いいえ、はじめてです」
顔のオデキをかくそうとしてベタベタと塗り立てたのか、おかしい位こってりと厚化粧した女は、安白粉の匂いをプンプンさせながら、小沢の傍に掛けると、
「――おビール持って来まひょか」
大阪弁を使っているが、アクセントは
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