聯想させるものだが、たしかにこの際の雨は、その娘の一糸もまとわぬ姿を、一層なまなましく……というより痛々しく見せるのに効果があった。
そこは四ツ辻だったが、角の家に一軒門燈がついていて、その灯りが雨を透して、かすかに流れていたから、娘の顔はほのかに見えた。
あどけない可愛い顔立ちは、十六、七の少女のようだった。しかし、むっちり肉のついた肩や、盛り上った胸のふくらみや、そこからなだらかに下へ流れて、一たん窪み、やがて円くくねくねと腰の方へ廻って行く悩ましい曲線は、彼女がもう成熟し切った娘であることを、はっと固唾を飲むくらいありありと示していた。
もっとも、小沢はいたずらに固唾を飲んで、いたずらに観察していたわけではない。
そんな余裕はなかった。
とにかく娘は、
「助けて下さい!」
と、言っているのだ。
しかし、どう助ければいいのか。――いや、そんなことを考えている場合ではない。
何はともあれ、小沢は著ていたレインコートをあわてて脱いだ。(そのレインコートは軍隊用のものだから、もっと別の名があった筈だが、この際そんなことはどうでもよい)
そして、娘の裸の体へぱっと著せてや
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