だって、あいつらは留置場へはいってるんだ。留置場へはいってるものを、手術しろはむりだよ」
 伊部は一応断ったが、しかし、刑事もそして小沢も、いや、道子までが口をそろえて口説いた。刑事は言った。
「伊部さん、とってやって下さい。何も留置場の中で手術してくれとは言いませんよ。どうせ彼等は少年刑務所へ一応送られるが、しかし、出て来るとまた刺青のために横へそれるにきまっている。刺青があれば真面目な働きもしにくいですからな。こちらも何とか便宜をはからうから、一つやってみて下さい」
 小沢も言った。
「君はこの頃は何もせず、ぶらぶらしているそうじゃないか。道子さんが心配して毎日泣いてるよ。伊部君、この刺青をとる手術をきっかけに、もう一度病院の仕事へ戻ってくれ。君のデカダンスはそりゃ判らぬこともない。しかし、そろそろ君も太陽の光の下へ出たらどうだ」
 道子も必死だった。
「兄さん、お願いです。仕事して頂戴! 折角今日こうして許していただいて、うちへ帰っても、今まで通りだったら、何にもならないわ」
 伊部は暫く考えていたが、やがて、
「よし、やろう。あの刺青が燈台もと暗しでおれの家の近所で植えつけられ
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