の一党を自首させた夜までのまる一昼夜くらい、充実した時間は、かつて小沢を訪れなかった――と言えよう。
 しかも、なお、偶然は小沢をつきまとって離れなかったのだから人生は面白い。
 雨男の行くところ、必ず雨を呼び起すように、この「偶然一代男」の行くところ、必ず降り掛かる偶然があるのである。
 例えば――。
 小沢はS署の玄関で、豹吉たち青蛇団を見送った足で、伊部の家を訪れると、伊部は(むろん)居らず妹の道子ひとり、しょんぼり留守番をしていて、
「兄さんはS署に留置されているのです。どんな悪いことをしたのか、知りませんが、明日あたしに出頭しろと、S署から云って来ました。小沢さん、お願いです。あたしと一緒にS署へ行って下さいません……?」
 と、いうのである。
「S署……?」
 と、小沢はきいて驚いた。実は小沢は……
「――僕も明日S署へ行くんです。いや、行かねばならないんです」
 雪子の釈放のこともあったし、自首した豹吉たちのことも気になっていた。
「じゃ、今夜はここでお泊りになって下さい……」
 若い娘一人では物騒で、寂しい――と、道子は赧くなって、モジモジ言った。
「はア、でも……」

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