、素裸で歩いてたらしいね」
「泳ぎを知ったはるとは、知りまへんでしたなア」
「泳ぎか。およばずながら、亀みたいもんだ。あはは……」
 亀ときいて、亀吉は自分のことを言われたのだと、勘違いして、
「あのウ、わては金槌だンね」
 と、黒い顔を突き出した。
「なんだ、お前は……?」
「青蛇団だす」
 亀吉はぱっと上衣を脱ぎ捨てると、背中を見せた。
 青い蛇の刺青!
「お前雪子という女知ってるか……?」
 伊部はいきなりきいた。
 豹吉ははっとした。伊部が雪子を知っているとは意外だった。が、それよりもなぜ、いきなり雪子の名を口にしたのだろうか。

    朝の構図

「偶然というものは、続きだすときりがない」
 と、作者はかつて書いた。
「偶然のない人生ほどつまらぬものはない」
 とも書いた。
 例えば、小沢十吉!
 普通なら、彼は復員直後の無気力な虚脱状態のまま、一種、根こぎにされた人となって、ぼんやり日を送ったところだろうが、深夜雨の四ツ辻で、裸の娘を拾ったという偶然は、次々に偶然を呼んで、まるで欠伸をする暇もないくらい、目まぐるしい一昼夜を過したのだ。
 いわば、雪子を拾った夜から青蛇団
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