ると、青蛇団も引きあげかけた。
小沢はお加代を呼びとめて、
「その唖の娘は、いつから青蛇団にはいったの」
と、優しくきいた。
「今日から」
と、お加代は言って、ふとしみじみした口調になると、
「――ほら、見てやってごらん」
と、唖の娘の腕をまくり上げて、
「――可哀想に刺青の墨の色がまだ濡れてるわよ」
「刺青……?」
小沢は急にはっとして思い当ることがあった。
唖の娘の二の腕の刺青……。
その生なましい青い墨の色を見た途端、小沢の頭には……。
梅田の闇市で見た刺青の男――市電の釣革にぶら下った青い腕――細工谷町の四ツ辻――唖の娘を連れてはいった「横井喜久造」の標札のあるしもた家――伊部の家の近所――四ツ辻――裸の……娘。
これらのイメージが同時に閃いた。
「そうだ、たしかにそうだ、たしかにあの男だ、あの家だ」
小沢はそう叫ぶと、一同が引揚げるのも待たず、ぷっと駈け出して行った。
(映画の手法に従えば、ここで場面は当然針助の家に移るわけだ。作者は試みにこの場面を、シナリオ――つまり映画台本の形式で書いてみることにする)
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