受け取られたあなたが、すぐ駈けつけて行かれるにしても、荒神口というところへ着かれるのが何時になるか、全然見当がつかないでしょう。それまで駅で待っているというのはなかなか……。せめて何時に待つと時間が書いてあれば、あれでしょうが……」
「私もおかしいなと思ったんですけど、とにかく主人が来いというのですから、子供に晩御飯を食べさせている途中でしたけど、あわてて出て来たんです」
乱れた裾をふと直していた。
「御主人だということは判ったんですね」
新吉はふと小説家らしい好奇心を起していた。
「近所の人に見て貰いましたら、これは大阪の中央局から打っているから、行って調べて貰えと教えて下すったので、中央局で調べて貰いましたら、やっぱり主人が打ったらしいんです」
「お宅は……?」
「今里です」
今里なら中央局から市電で一時間で行けるし、電報でわざわざ呼び寄せなくともと思ったが、しかし、それを訊くのは余りに立ち入ることになるので新吉は黙っていると、女は、
「――ウナで打っているんですけど、市内で七時間も掛ってますから、間に合わないと思いましたが、とにかく探して行こうと思って、いろいろ人にききまし
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