傍点]太閣の天下をば、命[#「命」に白丸傍点]をかけた陰謀[#「陰」に白丸傍点]の、意地[#「意」に白丸傍点]ずくどりの的にして、命[#「命」に白丸傍点]知らずの一味[#「一」に白丸傍点]郎党、一蓮託生[#「一」に白丸傍点]の手下に従え、一気呵成[#「一」に白丸傍点]に奪わんと、一騎当千[#「一」に白丸傍点]の勢い[#「勢」に白丸傍点]の、帷幄[#「帷」に白丸傍点]は東山南禅寺[#「南禪寺」と不統一は底本のまま]、一[#「一」に白丸傍点]に石川、二に忍術で、三で騒がす、四に白浪の、五右衛門と噂に高い、洛中洛外かくれもなき天下の義賊、石川五右衛門とは俺のことだ」
 と、名乗った。
 が、佐助は、石川五右衛門と聴いても、少しも驚かず、こりゃますます面白くなったわいと、ぞくぞくしながら、
「さては、伏見桃山千鳥の香炉と囁いたは、桃山城に忍び入り、太閣秘蔵の千鳥の香炉を、奪い取らんとのよからぬ談合《だんごう》でありしよな」
 と、詰め寄った。
 すると、五右衛門は、さては聴かれてしまったかと、暫らく唸っていたが、やがて、大音声を張り上げて、相も変らぬ怪しげな七五調を飛ばしはじめた。
「石が物言
前へ 次へ
全67ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
織田 作之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング