佐助はこの言葉を聞くと、風流を解する男にめぐり合ったうれしさに、すっかり気を良くしたので、
「明けて口惜しい竜宮[#底本では「龍宮」]土産、玉手の箱もたまには明かぬ……」
 と、例の調子を弾ませて、
「――明けてたまるか風穴一つ、と申すのもこの顔一面、疱瘡の神が手練の早業、百発百中の手裏剣の跡が、網代[#「網」に白丸傍点]の目よりもなお厳重に、赤[#「赤」に白丸傍点]い鰯のうぬ[#底本では「うね」と誤植]が手裏剣、仇[#「仇」に白丸傍点]な一匹もらしはせじと、見張って取り巻くあまた[#「あ」に白丸傍点]のアバタ[#「ア」に白丸傍点]、あの字[#「あ」に白丸傍点]づくし[#底本では「ずくし」と誤植]のアバタ[#「ア」に白丸傍点]の穴が、空地[#「空」に白丸傍点]あけず[#「あ」に白丸傍点]に葦[#「葦」に白丸傍点]のまろ屋、さては庵室[#「庵」に白丸傍点]あばら屋[#「あ」に白丸傍点]と、軒を並べた雨戸[#「雨」に白丸傍点]を明けりゃ[#「明」に白丸傍点]、旭[#「旭」に白丸傍点]の登る勢いに、薊[#「薊」に白丸傍点]の花の一盛り、仇[#「仇」に白丸傍点]な姿に咲きにおう、アバタ[#「ア
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