究史上から観て、頗《すこぶ》る有意義なるものが多いのであるが、近来交通機関が益々発達したると、都会風が全く地方を征服したるとに依り、地方特有の玩具が益々影が薄れて来て、多くは都会化した玩具や、人形を作るようになって来たのは如何にも遺憾《いかん》である。
郷土的な趣味や雅致《がち》あるものも、購買者が少なければ、製作者もこれに依って生活が出来ぬという経済的原因に支配されて、保存さるべきものが、保存されずに亡び行くことは惜みても余りあることである。
三
都会的趣味は、一面地方を侵害しては行くが、物価の高い都会生活では、到底製作出来ぬようなものを、比較的生活費が低いのと、生活|環境《かんきょう》が安定しているのとで、非常に面白味のある玩具が、或る地方には今なお製作されている処もある。
かくの如きものは是非とも保存して、その地方の一特産としたいものである。その他に趣味上保存すべき郷土的人形や、玩具に対しても保護を加えて存続させたいものである。近来|市井《しせい》に見かける俗悪な色彩のペンキ塗のブリキ製玩具の如きは、幼年教育の上からいうも害あって益なかるべしと思うのである
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