笹野観音で毎年十二月十七、八日の両日に売出す玩具であって、土地で御鷹というのは素朴な木彫で鶯《うぐいす》に似た形の鳥であるが、これも九州|太宰府《だざいふ》の鷽鳥《うそどり》や前記の鶉車の系統に属するものである。
 鷹山《ようざん》上杉治憲《うえすぎはるのり》公が日向|高鍋《たかなべ》城主、秋月家より宝暦十年の頃十歳にして、米沢上杉家へ養子となって封を襲うた関係上、九州の特色ある玩具が奥州に移ったものと見られる。仙台地方に流行するポンポコ槍《やり》の尖端《せんたん》に附いている瓢《ひさご》には、元来穀物の種子が貯えられたのである。これが一転して玩具化したのである。

       二

 かく稽《かんが》えて見ると、後世全く無意味|荒唐《こうとう》と思われる玩具にも、深き歴史的背景と人間生活の真味が宿っている事を知るべきである。アイヌの作った一刀彫《いっとうぼり》の細工ものにも、極めて簡素ではあるが、その形態の内に捨て難き美を含んでいるのである。
 地方|僻遠《へきえん》の田舎に、都会の風塵から汚されずに存在する郷土的玩具や人形には、一種言うべからざる簡素なる美を備え、またこれを人文研
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