土俗玩具の話
淡島寒月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)満足せしむる底《てい》の

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)僧|円珍《えんちん》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十四年九月『副業』第二巻第九号)
−−

       一

 玩具と言えば単に好奇心を満足せしむる底《てい》のものに過ぎぬと思うは非常な誤りである。玩具には深き寓意と伝統の伴うものが多い。換言すれば人間生活と不離の関係を有するものである。例えば奥州の三春駒《みはるごま》は田村麻呂将軍が奥州征伐《おうしゅうせいばつ》の時、清水寺の僧|円珍《えんちん》が小さい駒を刻《きざ》みて与えたるに、多数の騎馬武者に化現《かげん》して味方の軍勢を援《たす》けたという伝説に依《よ》って作られたもので、これが今日|子育馬《こそだてうま》として同地方に伝わったものである。日向《ひゅうが》の鶉車《うずらぐるま》というのは朝鮮の一帰化人が一百歳の高齢に達した喜びを現わすために作ったのが、多少変形して今日に伝ったのである。米沢の
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