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玩具及び人形は単に一時の娯楽品や、好奇心を満足せしむるを以《も》ってやむものでない事は、人類最古の文明国たりし埃及《エジプト》時代に已《すで》に見事なものが存在したのでも知られる。英国の博物館には、四、五千年前のミイラの中から発見された玩具が陳列されてあるのである。これに依って見ても玩具は人類の生活と共に存在したことが想われる。
玩具は人類の思想感情の表現されたものである事は、南洋の蛮人の玩具が怪奇にして、文明国民の想像すべからざる形態を有するに見ても知るべきである。概《がい》して野蛮人は人を恐怖せしむるが如きものを表現して喜ぶ傾向を有するのである。されば玩具や人形は、単に無智なる幼少年の娯楽物に非《あら》ずして、考古学人類学の研究資料とも見るべきものである。茲《ここ》において我が地方的玩具の保護や製作を奨励《しょうれい》する意味が一層|深刻《しんこく》になるのである。[#地から1字上げ](大正十四年九月『副業』第二巻第九号)
底本:「梵雲庵雑話」岩波文庫、岩波書店
1999(平成11)年8月18日第1刷発行
入力:小林繁雄
校正:門田裕志
2003年2月9日作成
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