は面継《めんつぎ》の模様であったのを覚えています位、僕が面好きであったと共に、玩具屋にも種々あったものです。清水晴風さんの『うなゐのとも』という玩具の事を書いた書の中にも、ベタン人形として挙げてあるのはこれで、肥後熊本日奈久で作られます。僕は上方風《かみがたふう》にベッタ人形といっているが、ベタン人形と同じものですよ。それからこの間|仲見世《なかみせ》で、長方形の木箱の蓋《ふた》が、半ば引開になって、蓋の上には鼠がいて、開けると猫が追っかけて来るようになっトいる玩具を売ってますのを見たが、これは僕の子供の時分に随分|流行《はや》って、その後|廃《す》たれていたのが、この頃またまた復活して来たのですな。今は到底売れないが昔|亀戸《かめいど》の「ツルシ」といって、今|張子《はりこ》の亀の子や兵隊さんがありますが、あの種類《たぐい》で、裸体の男が前を出して、その先《さ》きへ石を附けて、張子の虎の首の動くようなのや、おかめが松茸《まつたけ》を背負っているという猥褻《わいせつ》なのがありましたっけ。こんな子供の玩具にも、時節の変遷が映《うつ》っているのですからな。僕の子供の頃の浅草の奥山の有様を
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