》く避《さ》けて言《い》はないやうにして居《ゐ》た。けれど遠《とほ》まはしに聞《き》き出《だ》した處《ところ》によると、田之浦《たのうら》の者《もの》で倅夫婦《せがれふうふ》は百姓《ひやくしやう》をして可《か》なりの生活《くらし》をして居《ゐ》るが、其《その》夫婦《ふうふ》のしうち[#「しうち」に傍点]が氣《き》に喰《くは》ぬと言《い》つて十|何年《なんねん》も前《まへ》から一人《ひとり》で此處《こゝ》に住《す》んで居《ゐ》るらしい、そして倅《せがれ》から食《く》ふだけの仕送《しおく》りを爲《し》て貰《もら》つてる樣子《やうす》である。成程《なるほど》さう言《い》へば何處《どこ》か固拗《かたくな》のところもあるが、僕《ぼく》の思《おも》ふには最初《さいしよ》は頑固《ぐわんこ》で行《や》つたのながら後《のち》には却《かへ》つて孤獨《こどく》のわび住《ずま》ひが氣樂《きらく》になつて來《き》たのではあるまいか。世《よ》を遁《の》がれた人《ひと》の趣《おもむき》があるのは其《その》理由《わけ》であらう。
其處《そこ》で僕《ぼく》は昨日《きのふ》チエホフ[#「チエホフ」に傍線]の『ブラツクモ
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