ボズさんのあじろ[#「あじろ」に傍点]の一《ひとつ》で、足場《あしば》はボズさんが作《つく》つた事《こと》、東京《とうきやう》の客《きやく》が連《つ》れて行《ゆ》けといふから一緒《いつしよ》に出《で》ると下手《へた》の癖《くせ》に釣《つ》れないと怒《おこ》つて直《す》ぐ止《よ》す事《こと》、釣《つ》れないと言《い》つて怒《おこ》る奴《やつ》が一|番《ばん》馬鹿《ばか》だといふ事《こと》、温泉《をんせん》に來《く》る東京《とうきやう》の客《きやく》には斯《か》ういふ馬鹿《ばか》が多《おほ》い事《こと》、魚《うを》でも生命《いのち》は惜《をし》いといふ事《こと》等《とう》であつた。
 其日《そのひ》はそれで別《わか》れ、其後《そのご》は互《たがひ》に誘《さそ》ひ合《あ》つて釣《つり》に出掛《でかけ》て居《ゐ》たが、ボズさんの家《うち》は一|室《ま》しかない古《ふる》い茅屋《わらや》で其處《そこ》へ獨《ひとり》でわびしげ[#「わびしげ」に傍点]に住《す》んで居《ゐ》たのである。何《なん》でも無遠慮《ぶゑんりよ》に話《はな》す老人《らうじん》が身《み》の上《うへ》の事《こと》は成《な》る可《べ
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