《こゝろもち》は同《おな》じである。
居室《へや》に歸《かへ》つて見《み》ると、ちやんと整頓《かたづい》て居《ゐ》る。出《で》る時《とき》は書物《しよもつ》やら反古《ほご》やら亂雜《らんざつ》極《きは》まつて居《ゐ》たのが、物《もの》各々《おの/\》所《ところ》を得《え》て靜《しづ》かに僕《ぼく》を待《まつ》て居《ゐ》る。ごろりと轉《ころ》げて大《だい》の字《じ》なり、坐團布《ざぶとん》を引寄《ひきよ》せて二《ふた》つに折《をつ》て枕《まくら》にして又《また》も手當次第《てあたりしだい》の書《ほん》を讀《よ》み初《はじ》める。陶淵明《たうえんめい》の所謂《いはゆ》る「不[#レ]求[#二]甚解[#一]」位《くらゐ》は未《ま》だ可《よ》いが時《とき》に一ページ讀《よ》むに一|時間《じかん》もかゝる事《こと》がある。何故《なぜ》なら全然《まる》で他《ほか》の事《こと》を考《かんが》へて居《ゐ》るからである。昨日《きのふ》も君《きみ》の送《おく》つて呉《く》れたチエホフの短篇集《たんぺんしふ》を讀《よ》んで居《ゐ》ると、ツイ何時《いつ》の間《ま》にか「ボズ」さんの事《こと》を考《かんが》へ出
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