可哀そうに、やっと十五でしょう?」
「私も可哀そうでならなかったけエど、つまり私の傍に居た処が苦しいばかりだし、又た結局《つまり》あの人も暫時《しばらく》は辛《つら》い目に遇《あっ》て生育《そだ》つのですから今時分から他人の間に出るのも宜かろうと思って、心を鬼にして出してやりました、辛抱が出来ればいいがと思って、……それ源ちゃんは斯様《こんな》だし、今も彼の裁縫《しごと》しながら色々《いろん》なことを思うと悲しくなって泣きたく成《なっ》て来たから、口のうちで唱歌を歌ってまぎらしたところなの。」
「そして貴姉、矢張局にお出《いで》なさいな。その方が宜いでしょうよ。それに局に出て多忙《いそがし》い間だけでも苦労を忘れますよ」とお富は真面目にすすめた。お秀は嘆息ついて、そして淋びしそうな笑を顔に浮かべ、
「ほんに左様《そう》ですよ、人様のお話の取次をして何番々々と言って居るうちに日が立ちますからねエ」と言って「おほほほほ」と軽く笑う。「女の仕事はどうせ其様《そん》なものですわ、」とお富も「おほほほほ」と笑ッた。そしてお秀は何とも云い難《にく》い、嬉しいような、哀れなような、頼もしいような心持
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