アやつて居《ゐ》るのだらうと自分《じぶん》には思《おも》はれた。廣庭《ひろには》に向《むい》た釜《かま》の口《くち》から青《あを》い煙《けむ》が細々《ほそ/″\》と立騰《たちのぼ》つて軒先《のきさき》を掠《かす》め、ボツ/\雨《あめ》が其中《そのなか》を透《すか》して落《お》ちて居《ゐ》る。半分《はんぶん》見《み》える土間《どま》では二十四五の女《をんな》が手拭《てぬぐひ》を姉樣《ねえさま》かぶりにして上《あが》りがまち[#「がまち」に傍点]に大盥《おほだらひ》程《ほど》の桶《をけ》を控《ひか》へ何物《なにもの》かを篩《ふるひ》にかけて專念《せんねん》一|意《い》の體《てい》、其桶《そのをけ》を前《まへ》に七ツ八ツの小女《こむすめ》が坐《すわ》りこんで見物《けんぶつ》して居《ゐ》るが、これは人形《にんぎやう》のやうに動《うご》かない、風呂《ふろ》の中《なか》の少年《せうねん》も同《おな》じくこれを見物《けんぶつ》して居《ゐ》るのだといふことが自分《じぶん》にやつと解《わか》つた。
 入口《いりくち》の彼方《あちら》は長《なが》い縁側《えんがは》で三|人《にん》も小女《こむすめ》が坐《す
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