には》で麥《むぎ》などを乾《ほ》す所《ところ》だらう、廣庭《ひろには》の突《つ》きあたりに物置《ものおき》らしい屋根《やね》の低《ひく》い茅屋《くさや》がある。母屋《おもや》の入口《いりくち》はレールに近《ちか》い方《はう》にあつて人車《じんしや》から見《み》ると土間《どま》が半分《はんぶん》ほどはすかひ[#「はすかひ」に傍点]に見《み》える。
 入口《いりくち》の外《そと》の軒下《のきした》に橢圓形《だゑんけい》の据風呂《すゑぶろ》があつて十二三の少年《せうねん》が入《はひつ》て居《ゐ》るのが最初《さいしよ》自分《じぶん》の注意《ちゆうい》を惹《ひ》いた。此《この》少年《せうねん》は其《そ》の日《ひ》に燒《や》けた脊中《せなか》ばかり此方《こちら》に向《む》けて居《ゐ》て決《けつ》して人車《じんしや》の方《はう》を見《み》ない。立《た》つたり、しやがん[#「しやがん」に傍点]だりして居《ゐ》るばかりで、手拭《てぬぐひ》も持《もつ》て居《ゐ》ないらし[#「い脱カ」の注記]、又《ま》た何時《いつ》出《で》る風《ふう》も見《み》えず、三|時間《じかん》でも五|時間《じかん》でも一日でも、あ
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