きするのもいやになつた。
 しかし時間《じかん》が來《く》れば動《うご》かぬわけにいかない只《た》だ人車鐵道《じんしやてつだう》さへ終《をは》れば最早《もう》着《つ》ゐたも同樣《どうやう》と其《それ》を力《ちから》に箱《はこ》に入《はひ》ると中等《ちゆうとう》は我等《われら》二人《ふたり》ぎり廣《ひろ》いのは難有《ありがた》いが二|時間半《じかんはん》を無言《むごん》の行《ぎやう》は恐《おそ》れ入《い》ると思《おも》つて居《ゐ》ると、巡査《じゆんさ》が二人《ふたり》入《はひ》つて來《き》た。
 一人《ひとり》は張飛《ちやうひ》の痩《やせ》て弱《よわ》くなつたやうな中老《ちゆうらう》の人物《じんぶつ》。一人《ひとり》は關羽《くわんう》が鬚髯《ひげ》を剃《そ》り落《おと》して退隱《たいゝん》したやうな中老《ちゆうらう》以上《いじやう》の人物《じんぶつ》。
 ※[#「月+叟」、第4水準2−85−45]《や》せた張飛《ちやうひ》は眞鶴《まなづる》駐在所《ちゆうざいしよ》に勤務《きんむ》すること既《すで》に七八|年《ねん》、齋藤巡査《さいとうじゆんさ》と稱《しよう》し、退隱《たいゝん》の關羽《く
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