》の何時《なんじ》。半時間《はんじかん》以上《いじやう》待《ま》たねば人車《じんしや》が出《で》ないと聞《き》いて茶屋《ちやゝ》へ上《あが》り今度《こんど》は大《おほ》ぴらで一|本《ぽん》命《めい》じて空腹《くうふく》へ刺身《さしみ》を少《すこし》ばかり入《い》れて見《み》たが、惡酒《わるざけ》なるが故《ゆゑ》のみならず元來《ぐわんらい》八|度《ど》以上《いじやう》の熱《ねつ》ある病人《びやうにん》、甘味《うま》からう筈《はず》がない。悉《こと/″\》くやめてごろり轉《ころ》がるとがつかり[#「がつかり」に傍点]して身體《からだ》が解《と》けるやうな氣《き》がした。旅行《りよかう》して旅宿《やど》に着《つ》いて此《この》がつかり[#「がつかり」に傍点]する味《あぢ》は又《また》特別《とくべつ》なもので、「疲勞《ひらう》の美味《びみ》」とでも言《い》はうか、然《しか》し自分《じぶん》の場合《ばあひ》はそんなどころではなく病《やまひ》が手傳《てつだ》つて居《ゐ》るのだから鼻《はな》から出《で》る息《いき》の熱《ねつ》を今更《いまさら》の如《ごと》く感《かん》じ、最早《もは》や身動《みうご》
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