て粗末だが一見米国風に出来ている、新英洲《ニューイングランド》殖民地時代そのままという風に出来ている、屋根がこう急勾配《きゅうこうばい》になって物々しい煙突が横の方に一ツ。窓を幾個《いくつ》附けたものかと僕は非常に気を揉《も》んだことがあったッけ……」
「そして真個《ほんと》にその家が出来たのかね」と井山は又しょぼしょぼ眼《まなこ》を見張った。
「イヤこれは京都に居た時の想像だよ、窓で気を揉んだのは……そうだそうだ若王寺《にゃくおうじ》へ散歩に往って帰る時だった!」
「それからどうしました?」と岡本は真面目で促がした。
「それから北の方へ防風林を一|区劃《くかく》、なるべくは林を多く取って置くことにしました。それから水の澄み渡った小川がこの防風林の右の方からうねり出て屋敷の前を流れる。無論この川で家鴨《あひる》や鵞鳥《がちょう》がその紫の羽や真白な背を浮べてるんですよ。この川に三寸厚サの一枚板で橋が懸《か》かっている。これに欄干を附けたものか附けないものかと色々工夫したが矢張り附けないほうが自然だというんで附けないことに定《さだ》めました……まア構造はこんなものですが、僕の想像はこれで
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