|真面目《まじめ》になった。
「其先《さき》を僕が言おうか、こうでしょう、最後《おしまい》にその少女《むすめ》が欠伸《あくび》一つして、それで神聖なる恋が最後《おしまい》になった、そうでしょう?」と近藤も何故《なぜ》か真面目で言った。
「ハッハッハッハッハッハッ」と二三人が噴飯《ふきだ》して了った。
「イヤ少なくとも僕の恋はそうであった」と近藤は言い足した。
「君でも恋なんていうことを知っているのかね」これは井山の柄にない言草。
「岡本君の談話《はなし》の途中だが僕の恋を話そうか? 一分間で言える、僕と或|少女《むすめ》と乙な中《なか》になった、二人は無我夢中で面白い月日を送った、三月目に女が欠伸一つした、二人は分れた、これだけサ。要するに誰《たれ》の恋でもこれが大切《おおぎり》だよ、女という動物は三月たつと十人が十人、飽《あ》きて了う、夫婦なら仕方がないから結合《くっつ》いている。然しそれは女が欠伸を噛殺《かみころ》してその日を送っているに過ぎない、どうです君はそう思いませんか?」
「そうかも知れません、然し僕のは幸にその欠伸までに達しませんでした、先を聴いて下さい。
「僕もその頃、
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