ぶん》の宅《たく》から一丁[#ルビ抜けはママ]ばかり離《はな》れた桑園《くはゞたけ》の中《なか》に借馬屋《しやくばや》があるので、幾度《いくたび》となく其處《そこ》の廐《うまや》に通《かよ》つた。輪廓《りんくわく》といひ、陰影《いんえい》と云《い》ひ、運筆《うんぴつ》といひ、自分《じぶん》は確《たしか》にこれまで自分《じぶん》の書《か》いたものは勿論《もちろん》、志村《しむら》が書《か》いたものゝ中《うち》でこれに比《くら》ぶべき出來《でき》はないと自信《じしん》して、これならば必《かなら》ず志村《しむら》に勝《か》つ、いかに不公平《ふこうへい》な教員《けうゐん》や生徒《せいと》でも、今度《こんど》こそ自分《じぶん》の實力《じつりよく》に壓倒《あつたう》さるゝだらうと、大勝利《だいしようり》を豫期《よき》して出品《しゆつぴん》した。
出品《しゆつぴん》の製作《せいさく》は皆《みん》な自宅《じたく》で書《か》くのだから、何人《なにぴと》も誰《たれ》が何《なに》を書《か》くのか知《し》らない、又《また》互《たがひ》に祕密《ひみつ》にして居《ゐ》た殊《こと》に志村《しむら》と自分《じぶん》
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