は互《たがひ》の畫題《ぐわだい》を最《もつと》も祕密《ひみつ》にして知《し》らさないやうにして居《ゐ》た。であるから自分《じぶん》は馬《うま》を書《か》きながらも志村《しむら》は何《なに》を書《か》いて居《ゐ》るかといふ問《とひ》を常《つね》に懷《いだ》いて居《ゐ》たのである。
さて展覽會《てんらんくわい》の當日《たうじつ》、恐《おそ》らく全校《ぜんかう》數百《すうひやく》の生徒中《せいとちゆう》尤《もつと》も胸《むね》を轟《とゞろ》かして、展覽室《てんらんしつ》に入《い》つた者《もの》は自分《じぶん》であらう。※[#「圖」の「回」に代えて「面から一、二画目をとったもの」、467−4]畫室《づぐわしつ》は既《すで》に生徒《せいと》及《およ》び生徒《せいと》の父兄姉妹《ふけいしまい》で充滿《いつぱい》になつて居《ゐ》る。そして二|枚《まい》の大畫《たいぐわ》(今日《けふ》の所謂《いはゆ》る大作《たいさく》)が並《なら》べて掲《かゝ》げてある前《まへ》は最《もつと》も見物人《けんぶつにん》が集《たか》つて居《ゐ》る二|枚《まい》の大畫《たいぐわ》は言《い》はずとも志村《しむら》の作《さく
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