す》い。そこで衆人《みんな》の心持《こゝろもち》は、せめて畫《ゑ》でなりと志村《しむら》を第《だい》一として、岡本《をかもと》の鼻柱《はなばしら》を挫《くだ》いてやれといふ積《つもり》であつた。自分《じぶん》はよく此《この》消息《せうそく》を解《かい》して居《ゐ》た。そして心中《しんちゆう》ひそかに不平《ふへい》でならぬのは志村《しむら》の畫《ゑ》必《かなら》ずしも能《よ》く出來《でき》て居《ゐ》ない時《とき》でも校長《かうちやう》をはじめ衆人《みんな》がこれを激賞《げきしやう》し、自分《じぶん》の畫《ゑ》は確《たし》かに上出來《じやうでき》であつても、さまで賞《ほ》めて呉《く》れ手《て》のないことである。少年《こども》ながらも自分《じぶん》は人氣《にんき》といふものを惡《にく》んで居《ゐ》た。
或日《あるひ》學校《がくかう》で生徒《せいと》の製作物《せいさくぶつ》の展覽會《てんらんくわい》が開《ひら》かれた。其《その》出品《しゆつぴん》は重《おも》に習字《しふじ》、※[#「圖」の「回」に代えて「面から一、二画目をとったもの」、466−8]畫《づぐわ》、女子《ぢよし》は仕立物《したて
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