盛大にやって居ましたが、其|主人《あるじ》は女で名は梅《うめ》、所天《つれあい》[#「所天」は底本では「所夫」]は二三年前に亡《なく》なって一人娘《ひとりむすめ》の里子《さとこ》というを相手に、先《ま》ず贅沢《ぜいたく》な暮《くらし》を仕《し》て居たのです。
訴訟用から僕は此家に出入することとなり、僕と里子は恋仲になりました、手短に言いますが、半年|経《たた》ぬうちに二人《ふたり》は離れることの出来ないほど、逆《のぼ》せ上げたのです。
そして其《その》結果は井上博士が媒酌《ばいしゃく》となり、遂《つい》に僕は大塚の家を隠居し高橋の養子となりました。
僕の口から言うも変ですが、里子は美人というほどでなくとも随分人目を引く程の容色《きりょう》で、丸顔の愛嬌《あいきょう》のある女です。そして遠慮なくいいますが全く僕を愛して呉《く》れます、けれども此《この》愛は却《かえ》って今では僕を苦しめる一大要素になって居るので、若《も》し里子が斯《か》くまでに僕を愛し、僕が又た斯《こ》うまで里子を愛しないならば、僕はこれほどまでに苦しみは仕ないのです。
養母の梅は今五十歳ですが、見た処《ところ》
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