と、上田は冷ややかに笑います、鷹見は、
「イヤ、あんな男に限って、女にかあいがられるものサ、女の言いなりほうだいになっていて、それでやはり男だから、チョイと突《つ》っ張《ぱ》ってみる、いわゆる張りだね、女はそういうふうな男を勝手にしたり、また勝手にされてみたりすると、夢中になるものだ。だから見たまえ、あの五十|面《づら》のばあさんが、まるで恥も外聞も忘れていたじゃあないか。鸚鵡《おうむ》の持ち主はどんな女だか知らないがきっと、海山千年の女郎だろうと僕は鑑定する。」
「まアそんな事だろう、なにしろ後家ばあさん、大いに通《つう》をきかしたつもりで樋口《ひぐち》を遊ばしたからおもしろい、鷹見君のいわゆる、あれが勝手にされてみたのだろうが、鸚鵡まで持ちこまれて、『お玉さん樋口さん』の掛合《かけあい》まで聞かされたものだから、かあいそうに、ばあさんすっかりもてあましてしまって、樋口のいない留守に鸚鵡を逃がしたもんだ、窪田君、あの滑稽《こっけい》を覚えているかえ。」
 私はうなずきました、樋口が鸚鵡を持ちこんだ日から二日目か三日目です、今では上田も鷹見もばあさんと言っています、かの時分のおッ母《か
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