けらるゝは、当時《そのかみ》の源廷尉《げんていゐ》宛然《えんぜん》なり、予《よ》も肉《にく》動《うご》きて横川氏《よこかわし》と共《とも》に千島《ちしま》に行《ゆ》かばやとまで狂《くるひ》たり、舟《ふね》は大尉《たいゐ》萬歳《ばんざい》の歓呼《くわんこ》のうちに錨《いかり》を上《あ》げて、此帝都《このていと》を去りて絶海無人《ぜつかいむじん》の島《たう》をさして去りぬ、此《こ》の壮《さか》んなる様《さま》を目撃したる数萬《すうまん》の人、各々《めい/\》が思ふ事々《こと/″\》につき、いかに興奮感起《こうふんかんき》したる、ことに少壮《せうさう》の人の頭脳《づなう》には、此日《このひ》此地《このち》此有様《このありさま》永《なが》く描写《べうしや》し止《とゞ》まりて、後年《こうねん》いかなる大業《たいげふ》を作《な》す種子《たね》とやならん、予《よ》は集《つど》へる人を見て一種《いつしゆ》頼《たの》もしき心地《こゝち》も発《おこ》りたり、此一行《このいつかう》が此後《こののち》の消息《せうそく》、社員《しやゐん》横川氏《よこかはし》が通信に委《くは》しければ、読みて大尉《たいゐ》の壮行
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