此《こゝ》に曳《ひ》きしも少《すくな》からで、また一倍《いちばい》の賑《にぎ》はひはありしならん、一|人《にん》志《こゝろざ》しを立《たて》て国家《こくか》の為《ため》に其身《そのみ》をいたせば、満都《まんと》の人《ひと》皆《み》な動かされて梅の花さへ余栄《よえい》を得《え》たり、人は世に響《ひゞ》き渡《わた》るほどの善事《よきこと》を為《な》したきものなり、人は世に効益《かうえき》を与《あた》ふる大人君子《たいじんくんし》に向《むか》ひては、直接の関係はなくとも、斯《か》く間接の感化《かんくわ》をうくるものなれば、尊敬の意をうしなふまじきものなりなど、花は見ずして俯向《うつむき》ながら庭を巡《めぐ》るに、斯《か》く花園《はなぞの》を開《ひら》きて、人の心を楽《たのし》ます園主《ゑんしゆ》の功徳《くどく》、わづかの茶代《ちやだい》に換《か》へ得《え》らるゝものならず、此園《このゑん》はそもいかにして誰《だれ》が開きしぞ。


     第三囘


此《こ》の梅屋敷《うめやしき》は文化九年の春より菊塢《きくう》が開きしなり、百|花園《くわゑん》菊塢の伝《でん》は清風廬主人《せいふうろしゆ
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