勢が傾くと、宋は復た女眞を裏切り、蒙古と協力して女眞を倒したのはよいが、やがて宋自身も蒙古に併呑されて仕舞つた。かかる過去の苦き經驗も、未だ支那の政治家を十分に覺醒せしむるに足らぬ。目前の打算に明かで大局の利害に暗い支那の政治家は、今も以[#レ]夷制[#レ]夷政策を固執する。之が爲に自國の開發を沮み、東亞の平和を害せしこと夥しい。
昨年末に最後の日本訪問をした孫文氏は、その前後に、日本はアジアの一國であることを打忘れ、白人の仲間に加はり、その手先となつて彼等同樣の侵略主義を行うた。白人をして東亞に跋扈せしめた一半の責は日本人が負はねばならぬ。支那に排日の起つたのも當然である。日本は今後その非を改め、支那と提携して白人に對抗せなければならぬ。日支の親善が東亞の平和の保障で、その日支の親善は日本人が現實に努むべき義務があるかの如き意見を述べて居る。日支の親善の必要なることは、吾が輩も孫文氏と同感である。ただ氏が過去に於て日本がアジアの一國たることを打忘れたとか、侵略主義を取つたとか、乃至白人の跋扈を助長したとかの非難は、誣にあらざれば妄と申さねばならぬ。過去に於て支那人こそアジア人たるこ
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