脂民膏。下民易[#レ]虐。上天難[#レ]欺」と題してある、所謂戒石の銘が各衙門の正面に刻されてあつても、古來の弊風は少しも改まらぬ。民國以來この腐敗一層を加へたと傳へられて居る。ブランド氏は支那政府が日本を始め諸外國から借り受けた巨額の借款は、その名義の如何に拘らず、大部分は軍閥や議員や官吏の懷中に消え失せたと公言して居る。此等の事情を考へると、目下北京で開催中の關税會議によつて、首尾好く關税が増收されても、それが果して支那の内治の改良や國民の福利に資し得るかは、大なる疑問といはねばならぬ。極樂息子達に巨額の遺産を讓り渡した場合の樣に、軍閥や職業政治家が、この増收を目當に、一層の爭鬪や腐敗を助長する危懼がないでもない。萬一此の如きことありては、今囘の關税會議は豫期とは反對に、支那國内の紛爭の種を蒔く結果とならぬとも限らぬ。しかのみならず關税の増收は、却つて一般支那國民の消費税を加重する恐がある。されば關税増收の使途を、嚴重に監視若くば監督することは、支那には氣の毒でも、事情已むを得ざることかと思ふ。

         三

 支那人の性格や能力に就いて、種々の説が發表されて居る中で、
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