ヲ[#「てへん+綴のつくり」、185−13]捨而隨[#レ]之。水蟲馬糞。皆※[#「火+(世/木)」、第3水準1−87−56]而食[#レ]之。……九月初。城中※[#「此/肉」、185−13]骼山積。斷髮滿[#レ]路。天日爲昏。存者十之一二。枯垢如[#レ]鬼。河牆下敲[#二]※[#「てへん+綴のつくり」、185−14]人骨[#一]。吸[#二]其髓[#一]。
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といふ。明末には可なり多數の宣教師が支那に入り來り、その若干は開封にも滯在し居つた。その一人なる Roderic de Figueredo(費樂徳)の如きは、開封陷落の時に城と運命を共にして溺死した(〔Cordier; Histoire ge'ne'rale de la Chine. Tome III, p. 84〕)。從つてこの開封の慘事は、彼らの記録にも傳へられてある。Martin Martini(衞匡國)の所傳は、下の如く大體に於て『守※[#「さんずい+卞」、第3水準1−86−52]日記』や『大梁守城記』とよく一致して居る。
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六ヶ月間に亙る{賊軍の}攻圍によつて、開封城中の食糧が竭きた。米の一ポンドは同目方の銀と交換せられ、腐敗せる古皮の一ポンドは十クラウンに賣買されるといふ有樣である。死人の肉は豚肉同樣に公然と市場で販賣されて居る。死人の屍を通衢に曝らして、他人の食料に供することは、大なる功徳と認められた。やがて強者の餌食となるべき運命をも知らぬ弱き饑人達は、この屍の肉で露命を維《つな》いだ(Bellum Tartaricum{Semedo; History of China}p. 270)。
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比較的近代の事實としては、阿片戰爭の時(西暦一八四一)廣東でも人肉を食せし事あり(Chinese Repository Vol. X)、同治年間に起つた囘教徒の叛亂中にも往々 Cannibalism が現はれた。同治五六年(西暦一八六六―一八六七)の間に、巴里坤城内在住の漢民は、囘匪に糧道を斷たれた結果、遂に人肉を食用して居る(清の魏光※[#「壽/れんが」、第3水準1−87−65]の『戡定新疆記』卷一)。その約二年前の同治三四年(西暦一八六四―一八六五)の頃に、カシュガル城が重圍の裡に陷つた時、城中の支那人及び之に味方したトルコ人等は、糧食に竭きて人肉を食した。
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最後に彼等は五人又は六人づつ組を作り、蚤取り眼で餌食を搜がし歩く。單獨なる行人に出會ふと、彼等はこの不幸なる犧牲者を物蔭に引き込みて殺害し、その骨立せる躯體に僅に殘れる肉を、各自に分配した(Visits to High Tartary, Yarkand and Kashgar. p. 48)。
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これがその後間もなく千八百六十八年に、カシュガル地方を觀光した英人 Shaw の傳へる報道である。咸豐十一年(西暦一八六一)に、長髮賊徒の一根據地たる安慶が陷る頃には、三年に亙つて官軍の攻圍を受けた城中の住民は、人肉を以て、糧食に當て、人肉一斤は銅錢四十文にて市場に賣買されたといふ(Wilson; The Ever−Victorious Army. p. 79)。
九
(三)[#「(三)」は縦中横]嗜好品として人肉を食用する場合。
こは勿論特別の場合に限る。所が支那では、この特別なるべき場合が、存外頻繁に起るから驚く。已に紹介した齊の桓公が、易牙の子を食したのは、異味を賞翫するといふ理由で、この場合の一例と認めねばならぬ。隋の朱粲や五代の趙思綰も亦人肉愛用者の中に加へねばなるまい。朱粲が當初人肉に口を着けたのは、食糧の缺欠に由るが、彼が人肉を第一の美食と公言せる以上、彼は當然人肉愛用者と認めねばならぬ。趙思綰に就いては五代末(?)の無名氏の『玉堂閑話』(『太平廣記』卷二百六十九所引)に、
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趙思綰……凡食[#二]人肝[#一]六十六。無[#レ]非[#二]面剖而膾[#一レ]之。至[#二]食欲[#一レ]盡。猶宛轉叫呼。而戮者人亦一二萬。嗟乎|儻《モシ》非[#下]名將仗[#二]皇威[#一]而勦[#上レ]之。則孰能翦[#二]滅黔黎之※[#「けものへん+契」、187−10]※[#「けものへん+兪」、187−10][#一]。
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と傳へて居る。隨分驚くべき話ではないか。
唐の張※[#「族/鳥」、第4水準2−94−39]の『朝野僉載』に、薛震が人肉を愛用せし事を記して、
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武后時。杭州臨安尉薛震。好食[#二]人肉[#一]。有[#二]債主及奴[#一]。詣[#二]臨安[#一]。止[#二]於客舍[#一]。飮[#レ]之醉。竝殺[#レ]之
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