[#一]。
[#ここで字下げ終わり]
といふ説が勝を制して、※[#「こざとへん+是」、第3水準1−93−60]防の修築は見合せとなつた。この經義とは『書經』の禹貢篇の決[#二]九川[#一]距[#二]四海[#一]、浚[#二]※[#「田+犬」、第4水準2−81−26]※[#「さんずい+會」、読みは「かい」、483−2][#一]距[#レ]川の文句を指すものかと想ふ。河口を切り開き河底を浚渫するのは治水の要諦で、格別不思議とするに足らぬが、但その論據を、二千年以前の事實を記した經書に求めた點が、支那人的で面白いでないか。〕これと類似の事例は、支那史上に頗る多く、一々列擧するに堪へぬ。
一體支那人は師[#レ]古と稱して、古代の聖賢の行ふたことでなければ[#「なければ」は底本では「なけねば」]信用せぬ。聖賢の行はぬ新事業をやり出すと、不[#レ]師[#レ]古|底《トコロノ》非行として排斥する。秦の始皇帝や、宋の王安石らの改革が、不評判であるのは、他にも原因があるが、主としてこの支那人の保守思想に適せぬからである。
是故に彼等支那人の間には、先例といふことが豫想以上の大なる勢力をもつてゐる。〔これ
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