信用に在る。上下相信ぜぬ國は亡國である。故に信用が第一で、次が財政、軍備は更にその次に來るべきものである。この孔子の意見は、萬古に亙れる眞理であつて、決して軍備を輕視したものでない。孔子自身は有[#二]文事[#一]者、必有[#二]武備[#一]と申して居る位で、文弱一點張りの人ではない。併し孟子などは、仁者無[#レ]敵主義を鼓吹する餘り、仁義だに行はば、軍備は論ずるに足らぬかの如き口氣を漏らし、可[#レ]使[#三]制[#レ]梃以撻[#二]秦楚之堅甲利兵[#一]矣などと、武器無用に近き意見を述べて居る。兔に角後世の儒者は、多く軍備を輕視する傾向をもつて居ることは、爭ふべからざる事實である。
併し儒教はむしろ弊の少き方である。孔子と前後して出た老子の如き、墨子の如き、何れも極端な平和主義を説いて居る。不爭を主張する老子、兼愛(博愛)を主張する墨子は、軍備を無用とし、戰爭を排斥するのは當然のことである。かかる學説の影響を受けた支那人の間には、自然戰爭を厭忌する氣風が増進したに相違ない。
(三)[#「(三)」は縦中横]先天的に利害打算の念慮の發達した支那人は、小にしては爭鬪、大にしては戰爭、
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