と申出たが、滿場から笑殺されて仕舞つたといふ。笑殺されても、支那委員の言ふ所は先づ事實である。澤山な戰爭をしても、支那人は決して好戰でなく、又文弱でないともいへぬ。
支那人の文弱は一概に輕侮すべきでない。無暗な好戰より文弱の方が、世界の平和の爲にも喜ばしい。されど現在は民族競爭の時代である。武裝の時代である。この時代に、然も時代の犧牲となつて、尤も痛切に列強の壓迫を受けて居る彼等支那人が、依然文弱の氣風を改めぬならば、彼等の前途の爲に痛心に堪へぬ。殊に其の文弱が高遠なる理想に本づくのでなく、目前の怯懦を藏する爲めの文弱の如きは、支那の將來に對して大なる禍根と思ふ。〕
三 支那人の保守(上)
支那人は文弱的であると同時に、保守的である。支那人がしかく保守的であるのは、種々の原因があることと思ふ。
(一)[#「(一)」は縦中横]支那人の先天的性質が保守的である。
(二)[#「(二)」は縦中横]上古から支那人の文明が、その四隣の異族の間に卓越して居つた。故に支那人は古から自國の文明を自負し、之を唯一絶對のものの如く妄信して、その維持保存に力を用ゐた。この慣習が第
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