所であらう。
二 支那人の文弱(下)
兵役を苦にし、戰爭を厭ふ支那人は、概して外國に對して侵略を行はぬ。支那人は古代から華夏と誇稱して、四圍の異族を東夷・西戎・南蠻・北狄などと排斥して居るけれど、特別の場合の外は、決して之に兵力を加へぬ。輝[#レ]徳不[#レ]觀[#レ]兵とか、遠人不[#レ]服修[#二]文徳[#一]以來[#レ]之とかいふのが、支那人の蠻夷に對する大方針である。勿論この方針は理想で、實際に施しての効果は頗る疑はしい。
支那の北邊に居る塞外種族は、殺戮を以て耕作となし、掠奪を以て本業とする蠻民である。如何に支那人が平和に眷戀しても、彼等は容赦なく侵略を加へる。殷時代の※[#「けものへん+熏」、第4水準2−80−53]鬻、周の※[#「けものへん+僉」、第4水準2−80−49]※[#「けものへん+允」、第4水準2−80−30]、秦漢時代の匈奴、隋唐の突厥・囘※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]、宋の契丹・女眞・蒙古の如き、皆それである。併し支那人は決して此等の北狄に對して、兵力を以て對抗せぬ。時には以[#レ]夷制[#レ]夷の策を採ることもあるが、
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