て、民間の自宮者を禁止して居るが、それは看板若くば一時だけのこと、實際に於ては殆ど※[#「厂+萬」、第3水準1−14−84]行されなかつた。宮刑が廢せられ、宦官の存する以上、宦官の供給は、大體自宮者に待たねばならぬ筈故、自宮者の跡を絶つ譯がない。自宮者を禁止する政府自身が、その實自宮者にとつて第一の、もしくは唯一の需要者であることは、大なる皮肉と申さねばならぬ。清朝では明時代に比して、概して自宮者の取締規則を嚴重にし、また宦官補充の人數も僅少であつたから、明末の如き自宮者の濫出はなかつたらしい。
三
政府で宦官を採用するには、第一に身體試驗を行ふ。應募者が完全に割勢されて居るや否やを審査する。次にその年齡・容姿・性質・擧動・言語・音聲等を檢査する。年齡の若く容姿秀で、擧動閑雅、言語明晰、美聲で悧發な者が選に入る譯である。
入選者はその伎倆に應じて、相當の職業に從ふ。或る者は内外の取次に從事する。或る者は小間使となる。或る者は司法官となつて、仲間の者の非行を懲戒する。或る者は僧侶となつて、後宮の佛事を行ひ、又は女官達に慰安を與へる。或る者は音樂家となり、或る者は
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