俳優となる。内廷に戲園(舞臺)があつて、ここに時々演藝が試みられるが、その出演者は皆宦官に限る。或る者は料理人に、或る者は理髮者に、或る者は苑丁となる。降つては洗濯人・水汲人・掃除夫となるものもある。その他夜警に當る者、護衞に當る者もある。内廷一切の雜務は、宦官で處理するのである。彼等を取締る首領として、總管や副總管を置く。
割勢者は首尾よく宦官に採用されて、入内の素懷を達し得るのは一小部分で、その大部分は不合格者として、郷里に蟄居せなければならぬ。彼等の餘生ほど悲慘なものはなからう。明・清時代の宦官の本場は、直隷省殊に河間地方である。皇室直屬の宦官は、殆ど直隷出身に限る。明末に權勢を專らにした魏忠賢、清末に勢力を振うた李蓮英ら、皆河間出身の宦官であつた。明末の『野獲編』を見ると、當時河間地方には、入内に失敗せる幾多の自宮者が、自暴自棄の餘り、團結して往來の人馬に對して劫略を行ふ。故にこの方面の旅客車馬の遭難するもの夥しいが、實情を知悉せる官憲は、彼等の境遇を斟酌して、其狼藉に放任したといふ。
四
歴代朝政之失、半由[#二]官寺[#一]と支那人が評した通り、宦
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