も同一ではあるが、實質は相違して、蔡倫以後は、紙といへば、專ら樹皮、麻頭、敝布、古網等を材料として製造した書寫の材料を意味することとなつた。
 許愼の『説文解字』は東漢の和帝の永元十二年(西暦一〇〇)から安帝の建光元年(西暦一二一)にかけての作で(7)、即ち大體蔡倫の在世時代に作られたもので、殊に蔡倫と許愼とは若干知り合ひの間柄であらうと想像さるべき餘地さへある。その『説文解字』に紙の字を絮《フルワタ》一|※[#「竹かんむり/沾」、71−16]《スノコ》也と解説して居る。清の段玉裁は更に之に注して、
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按造[#レ]紙※[#「日+方」、第3水準1−85−13][#二]於漂絮[#一]。其初絲絮爲[#レ]之。以[#レ]※[#「竹かんむり/沾」、72−1]《ス》荐《スキカサネテ》而成[#レ]立。今用[#二]竹質木皮[#一]爲[#レ]之。亦有[#二]緻密竹簾[#一]荐[#レ]之是也(8)。
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といふ。許愼の絮一※[#「竹かんむり/沾」、72−2]也といふ解説のうちには、製紙の原料と方法とが含まれて居る。
 さて製紙の原料として絮を使用したのは何時代の
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