で傭主が給料を出さぬということが殆ど理窟にならぬ悪弊で、お客は此の為めにどれ程損をしているか分らない。第二、如何に楽な仕事だからとて勤務時間に制限が無く、二時三時の深更まで起きていることは工場の深夜業と略《ほ》ぼ同じ害があってよくない。第三、住込制度とは無限服役を強いる為めに必要なのであるから無論奴隷的悪制度である。で、以上の三項を根本的に改革して有給通勤祝儀廃止制を採って女給やお座敷女中は全然酌をせぬことにし、客の側にへばり[#「へばり」に傍点]ついていないことにして店の営業時間を一定さえすればいいのである。そしてこれ位なことは其筋の飲食店取締規則の改善に依っても容易に実行され得る性質のものであるが、それをしないのは要するに女給の自覚が足りないからだ。
こうした不合理な制度は幾万の若き女性を苦めているか? そして此のあやまった制度が作り出した環境の為めに、幾万の女性が堕落の淵へ沈んで行くことぞ? 登恵子は自分をもこめた女というものの、無力が腹立たしかった。そうして利害を共通する女給や仲居や女中の組合が緊要なことを思わずにはいられなかった。(男性の悪徳浮薄を改革するものは先ず我々の働
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