だからその行為たるや憎んでも飽きたらぬのである。
第一流の食堂風なレストランを除いて其他は、殆ど女給仲居に一円の給料も支払わないのが普通で、此の種職業婦人の八割までは全然主人から無報酬で働いている。それだのに女達は「傭人」という名目で其筋へ届け出られる。凡そ世の中に一厘の給料も支払わずに人を雇傭する権利があるであろうか? いや無給くらいはまだいい方でそれが甚しい処になれば逆様に傭人の方から主人へ向けて飯代を支払わねばならない。登恵子が行った千歳などでは月十八円の飯代を主人へ支払った上、何とか彼とか言って十円くらいは板場へ附け届けをせねば済まなかった。若しその附け届けを吝《おし》めば受持ち客の通し物をしても仲々拵えないで困らせる始末、併し心附けで済む間はまだ我慢のしようもあるが遂に彼等は最後のものまで要求するのである。そして応じなければ例の通りで困らせて其処に居たたまらなくして了う。それから又過って器物を毀すと弁償させられ、無銭飲食者に出喰わすとこれまた目先が利かぬと散々小言をきかされた上勘定を弁償させられるのである。何という横暴な主人だ。
第一、客が任意に置いて行くチップが有る所以
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