びつけ、「[#底本は「「」が欠け]横濱征伐に先掛致しくれと申す譯にはこれ無く此《この》方共身命を抛ちて征伐致候間、かはりに其方共二枚着る着物も一枚着て、金子用立てよ」といひつける。いやとはいへない。出張して來るのは少し荒つぽい。
「二十七日高橋上總大將にて二三十人|石下《いしげ》村へ參り、ひの屋竹村茂右衛門方へ入込、土藏を改め、三百俵有之、百俵は飯米に殘し二百俵献納すべき旨申聞、それより鈴木平右衛門方へ參り候處、主人留守にて分り兼候趣申立、手代並妻女を縛りあげ大道にひき据ゑ放火すべく、鐵砲の火繩にて古傘十本ばかりとり寄せ火をふきつけ、今にも燒棄になるべき樣子に驚き、三百兩献納」中山氏見聞記[#「中山氏見聞記」は割り注]燒かれようとした鈴木氏は今町長、現主は私の從弟に當る。
高橋上總は前に私の家に居たことあり、筑波の近間《ちかま》では何村の誰が金持か位は知つてゐたので、出かけて來たのであらう。下總國沼森八幡の別當だつたが、素行はよくなかつた。鬼怒川西の川尻では中山忠藏方におし入り拔身を下げてこは談判中、壬生の勢が來ると聞いて[#「來ると聞いて」は、底本では「來る聞といて」]、曳いて來た
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