るめを卷く事と、酒を呑ませる事は必然性が無いやうだ。私は今度五葉の松を移したが、高さ五間もあつたから大きい事は大きいが、『こんな大きな五葉は六七里四方には見當りません。これを枯らしては冥加に盡きますから』といはれて酒も呑ませたが。
樫はよく生えるが、樫の苗木ぐらゐ植えて根づかぬ木も無い。が大きければ大きい程よくつく。
凧を上げる。霞浦から朝に晩に飛行機が來るだけであつて、飛行機凧まで出來た。しりつぽ無しだ。筑波颪といつてもあまり寒くはない風の中に、大きいの、小さいのが浮んでゐる。
私達子供の時分は、床屋のへつか[#「へつか」に傍点]――何故へつか[#「へつか」に傍点]と呼ばれたか知らないが――の上げる定九郎凧、開いた傘を背中に背負つて縞の財布を鷲づかみにした人形型の大凧を見て、大入道凧を貼つてあげて見た。西ノ内十枚の大きさはあつたらうか。角凧と違つて縱に長い人形だからひき[#「ひき」に傍点]は弱いが、空中に浮んだなりが、地藏樣のやうだといふので村中の評判の惡いこと夥しい。
私は不評をとりかへす氣で、眼のまはりをくり拔いて、瞳だけくるくる回轉するやうに拵へて見た。村の連中は鳴
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