に分け綺麗に髮を結つて、小さい赤い人形の着物を着せる。實のいらぬ前はいい具合に羽毛がとれないからだ。男の子は山の筆[#「山の筆」に傍点]と呼んでる。水ぐらゐつけて板塀などへ書く分には書ける。

 水がぬるんで來た。
 田の中の水たまりに寒天樣の古鎖とも見えるぬる/\した紐を見るであらう。棒の先でそつと除けると、下に大きな蛙がかまへてゐる。砂もぐり[#「砂もぐり」に傍点]がひよろりと出て來ては、またもぐり込む。蛙は卵を番してるのだといはれる。
 芹は雪間にすら顏を出す。銀いろのびらうどに包まれて、うつら/\まどろんでる猫柳の芽。それに觸るる柔かな指先の感じは母の乳首を思ひ出させる。少しすると、表皮が裂けて黄いろい花粉をつけた花房となる。私はよく佛壇の花いけに※[#「「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている」、第4水準2−13−28]した。一度、それが花となり、芽となつて切口から白い根の生えてたには驚いた。
 ※[#「「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている」、第4水準2−13−28]してよくつくもの、柳、ポプラ、杉、椹。
 私のとこでは本讀みに來た少年達の組織した會があつて、年に一度づつ
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