地上に落ちて、ぢき放れた。蜘は動かない。蜂は最初蜘の周りを這ひ廻つてゐたが、やがて蜘をかかへて二三寸飛び上つたまま、庭の上をぶん/\めぐり初めた。
暫くさうしてゐたが、牡丹の根方のくろぼくの上へ止つて蜘をおろした。蜘は死んだやうに身じろきもしない。
蜂はくろぼくの日あたりのいい陰へ下りて口で土を掘ぢくり出した。少しづつ、少しづつ口で掻き/\土を退《の》けはじめた。
私はぢつと見てゐた。蜘は脚を張つたなりやはり動かなかつた。蜂はだん/\と小さな穴をこしらへて、いつか逆立になつて、からだを半分土の中にかくして、せつ/\と動いてゐる。凡三十分はたつたらう。蜂はからだごと土の中へ這入つて、頭だけ出しては土をくはへ出し、飛び上つては土を運び出して、人間の人さし指位はかくせさうな穴を掘りあげた。
穴が出來ると、蜂はくろぼくの上へ置いた蜘をかかへて、またはひつて行つた。
ぢき出て來た。蜘を穴の中へかくして來た。出て來ると、穴のふちをぐる/\歩いて今度は土をかぶせ出した。一しきりかぶせ終ると、自分の尾端で、はた/\と穴の上を叩いて固めて行つた。
蜂の作業は終つた。蜂は疲れた容子もなく羽や脚
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