をこすつて泥をすつかり落してからすうつと飛び去つた。
それから何日たつても蜂は來なかつた。
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蜘のいのちの
はかなさ
軒の褄なるや赤樫の樫の枝から
人の首
締むれば締まる糸かけて
だいきち[#「だいきち」に傍点]がな けら[#「けら」に傍点]がな
かからば喰はんと待ちけるが
蜘のいのちの
はかなさ
落葉のかさと鳴りてさへ
白き目を疲らすに
蝶も久しく飛ばねば
はらはへりにけり
蜘のいのちの
はかなさ
さても生きつつ
飛んで來てかかつた
べつ甲蜂を捕へよと
糸は繰る繰る蜂と共に
はたと音して落ちにけり
蜘のいのちの
はかなさ
夢の寢ざめの風の音
驚く夜もなき土室《つちむろ》に
蜂の仔《こ》のかへるまで
眠る日月の長からず
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底本:「雪あかり」書物展望社
1934(昭和9)年6月27日上梓
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2003年7月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあた
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