れ渡った朝だ。しかし、下って行く者は、それをたのしむ色はなく、顔は苦りきっていた。
中隊では、彼等が帰って来るのを待っていた。セミヤノフカへ分遣する部隊に加えるか、メリケン兵に備える部隊に加えるか、そのいずれかだ。アメリカの警戒隊は、大きい銃をかついで街をねり歩いていた。意地の悪い眼を光らせ、日本の兵営附近を何回となく行き来した。それは、キッカケが見つかり次第、衝突しようと待ちかまえている見幕だった。中隊では、おだやかに、おだやかにと、兵士達を抑制していた。しかし、兵員は充実して置かなければならなかった。
二三人の小人数で、日本兵が街を歩いていると、武器を持ったアメリカ兵は、挑戦的につめよって来た。
兵士はヒヤ/\した。同時に、なんとも云えない不愉快な反撥したい感情を味わった。それは、朝鮮人が日本人に対して持つ感情だ。そんな気がした。彼等は、わざと知らぬ振りをして、而も、メリケン兵が居る側へ神経を集中して通りぬけなければならなかった。が、向うから、こっちを打った場合、それでもおだやかにと心掛け、打たれていることが出来るか。いや、それは出来ない。で、兵士の数を負けないだけ無理やり、
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